外国人向け神戸のシェアハウス苦境 CFで寄付募る 「留学生たちの居場所を」

外国人向け神戸のシェアハウス苦境 CFで寄付募る 「留学生たちの居場所を」

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毎日新聞

国際交流シェアハウス「やどかり」の存続を模索し、クラウドファンディングを始めた中野みゆきさん=神戸市兵庫区で2020年5月11日午後2時、韓光勲撮影

 新型コロナウイルスの影響で経営難に陥った外国人向けのシェアハウス「やどかり」(神戸市兵庫区中道通2)が、施設を存続させるための寄付を募っている。留学生らが激減し、運営するNPO法人はいったん閉鎖を決めたが、かつての入居者や地域住民らが存続を熱望。「留学生や技能実習生たちの居場所を残したい」と、12日から100万円を目標にクラウドファンディング(CF)を始めた。  「どうやって教室や部屋のスペースを確保しようか話し合っていたのに」。4月1日のやどかり。誰もいなくなった談話室で、NPO法人「Oneself」理事長の中野みゆきさん(36)がつぶやいた。延べ840平方メートルに18部屋(定員48人)あるのに、残ったのは中国人留学生やベトナム人技能実習生ら長期滞在の6人だけ。わずか1カ月前は、日本語を学ぶ30人以上の技能実習生たちでにぎわっていた。談話室も日本語の教室として使っていた。  やどかりは中野さんが2015年に開設した。日本語の講師をする中で、住宅の契約でトラブルに巻き込まれたり、独り暮らしで孤独感を募らせたりする留学生の実情を知った。「居場所を作ってあげたい」と、旅館だった建物を改装し、家賃を月3万円ほどに抑えて運営してきた。スタッフの温かい人柄が生み出すアットホームな雰囲気は、入居者や地域住民を呼び寄せた。  今年4月まで1年3カ月間にわたり入居したベトナム人留学生、ラン・ホアンさん(26)はやどかりに救われた一人だ。18年10月に神戸市内の日本語学校に入ったが、最初に住んだ学生寮になじめなかった。勉強と生活費を稼ぐためのアルバイトとの両立に苦しみ、ホームシックで体調を崩した。学校の紹介でやどかりに移り、「みんなが優しく話を聞いてくれた。毎日が楽しくなった」と振り返る。19年9月には近隣住民を招いて母国の料理をふるまった。「神戸が自分のホームになった。家族のような存在です」  地域とも良い関係を築き、6年目を迎えたやどかりだが、新型コロナの影響は大きかった。今年1月には中国からの短期留学生20人の利用がキャンセルに。3月から入居予定だったベトナム人留学生らも来日できなくなった。3月末まで13人いた長期入居者は6人に減り、経営を支えてきた短期の宿泊客はゼロが続く。  中野さんは理事長の報酬を受け取らず、経費を切り詰めてきたが、テナント料や光熱費など施設を維持するだけで月約100万円の支出があった。金融機関の融資も審査に時間がかかる。3月中旬、中野さんは「もう限界」といったんは閉鎖を決めた。苦境を知った知人や入居者から「絶対になくさないで」「わたしは『やどかり』に帰りたい」という反響が相次いだ。地域住民からも「やめんといてよ」と声をかけられ、寄付の申し出もあった。  「ここが多くの人の居場所になっている。応援してくれる方や留学生らの思いに応えたい」。中野さんは存続の道を模索することに決め、CFで資金を募ることにした。目標は100万円。光熱費を抑え、国から持続化給付金の200万円を受け取れれば、半年は持ちこたえられる。1000円から5万円まで11種類の寄付メニューを用意し、返礼品としてミャンマーやナイジェリアの雑貨や、やどかりの宿泊チケットなどを贈る。CFのアドレスは(https://camp-fire.jp/projects/view/259235)。6月30日まで。問い合わせ先は、やどかり(078・224・5247)。【韓光勲】

 

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