来日できぬ実習生、地方の介護に崩壊の危機 競争も激化

来日できぬ実習生、地方の介護に崩壊の危機 競争も激化

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
朝日新聞デジタル

介護施設で介護の研修を受ける中国からの技能実習生の米欣さん(左)。来日してまもなく2年になる(大津市、医療法人「湖青会」提供)

 新型コロナウイルス対策の入国制限が続いている影響などで、外国人技能実習生が来日できず、各地の介護施設で人手不足が深刻化している。急速な高齢化により介護需要が増す中で、実習生に頼る地方の施設では、「長期化すれば地域の介護が崩壊する」と危機感を募らせる。国は他業種で働く実習生の活用を図るが、効果は出ていない。(山中由睦) 【写真】5月に開所した介護施設「まんてん高月」の2階。技能実習生が来日できず、利用者の受け入れができないため、一部の部屋は空いたままになっている=滋賀県長浜市高月町 ■中国人8人を採用、1人も来日できず  琵琶湖の北端にある滋賀県長浜市。社会福祉法人「まんてん」が5月に開所した介護施設を訪ねると、デイサービスなどに使う1階部分はがらんとし、2階のグループホームの数部屋も使われないままだった。担当者は「希望者は多いのに介護スタッフがおらず、受け入れられない」と嘆く。  「介護は大変とのイメージが先行し、人気がない」と山田一之理事長(65)。正規職員の確保が進まず、外国人技能実習生に期待し、中国人8人を採用。今年1月から働く予定だったが、新型コロナの影響で1人も来日できていない。  長浜市によると、特別養護老人ホームの入居待ちは昨年4月時点で市内では数百人にのぼるという。  青森県を中心に特別養護老人ホームやデイサービスなどを運営する社会福祉法人「楽晴会」も、4月から働く予定だった10人のバングラデシュ人実習生について来日のめどが立たない。  施設がある同県三沢市では高齢化が急速に進む。国内の15~64歳の生産年齢人口は25年後に約25%減る見込みだが、同市では4割近く落ち込み、働き手は減る一方だ。400人弱いる同会の介護職員には70代の高齢者もおり、毎年10人ほどが定年退職する。  斉藤淳理事長(60)は「実習生を安定して確保しないと持続的な運営はできない。コロナ禍が長期化すれば、地方の介護はやっていけない」と話す。  厚生労働省の試算では、2016年度に190万人だった介護従事者は、高齢化で25年度には245万人が必要になる。そのため、国は17年に技能実習制度を介護分野にも拡大。制度を監督する外国人技能実習機構によると、現在は延べ約1万2千人が働くと推計されるが、コロナ禍で介護分野の人手不足はさらに深刻化している。  社会福祉法人などの経営支援をしている国際介護人材育成事業団(東京)によると、首都圏や九州の6法人が運営する施設でも実習生約40人のうち半数が来日していない。小沼正昭専務理事(70)は「この状況が続けば介護現場が回らなくなる」と懸念する。 ■「都会で働くのを望む実習生は多い」  技能実習生の獲得競争は年々、激しさを増している。調理や清掃、建設などの各業種が現地で求人を出す中で、介護施設も待遇を日本人並みにするなどして人材確保を図る。  だが、介護に携わる実習生は高い日本語能力や介護の基礎知識が必要だ。また、給与水準の高い都市部に比べ、地方には実習生が集まりにくいという。大津市の介護施設で働く中国人実習生、米欣(べいきん)さん(24)は「東京や大阪は給与が高いという情報が広まり、都会で働くのを望む実習生は多い」と打ち明ける。

朝日新聞社

【関連記事】

WBS株式会社英語サイト

WBS株式会社中国語サイト