コロナ影響で国内待機の海外協力隊員 行方の農家手助け

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茨城新聞クロスアイ

ビニールハウスの中で除草作業をする海外協力隊員の西野尚之さん=行方市小貫

国際協力機構(JICA)は、新型コロナウイルスの影響で派遣先の国から日本に引き揚げた海外協力隊員を農家に派遣する事業を行方市で始めた。待機状態の隊員を人手不足に悩む農家が受け入れ、双方の悩みを解消する。現在、受け入れ予定は計3人。農家の労働力に限定せず、市民との交流も検討する。市の担当者は「市内の農業支援とともに、ゆくゆくは定住促進にもつなげたい」と隊員の活躍に期待している。 行方市が海外協力隊員を受け入れたきっかけは、今年5月、国際協力機構筑波国際センター(JICA筑波)から「国内で待機している隊員に、活動の場を提供できないか」と相談されたことだった。市側も新型コロナの影響で外国人技能実習生が帰国し、農家が人手不足の危機にあった。「隊員と地元の農家でウインウイン(相互利益)の関係をつくれる」(市担当者)と、受け入れを企画した。 今月から市内の葉物野菜農家で働いているのは、西野尚之さん(27)=ひたちなか市出身。2018年10月から、タンザニアの聾(ろう)学校で教員として活動してきた。 茨城県立水戸聾学校の元教員だった西野さんは「若いうちに新しいことにチャレンジしたかった」と一念発起し、隊員に志願。同国の聾学校2カ所で理科や算数を教え、日本文化を伝えていた。本来の任期は10月までだったが、今年に入って世界的に新型コロナの感染が拡大して隊員の引き揚げが決定、3月末に帰国した。西野さんは「(アジア系の見た目で)バスを乗車拒否されたり、『ウイルスが来た』と言われたりした」と当時の状況を振り返る。 8月になり、市が隊員向けに行った2泊3日の農業体験会に参加。行方の野菜の質や量、課題を知った。「自分に何かできないだろうか」と受け止め、事業への参加を決めた。 現在は肥料散布や除草、ビニールハウスの修繕などに従事する。「丁寧に教えてもらっているので、楽しく過ごせている」と話す。西野さんを受け入れた農家の横田富成さん(69)は「3人いた外国人実習生の1人が9月に帰国してしまった。(西野さんに)来てもらい大変助かっている」と感謝する。 市によると、現在2人の隊員が市内の農家で働いている。10月中にもう1人増える予定という。 西野さんの任期は来年3月末まで。「人手不足の手助けはもちろん、違う文化圏で生活していた経験を持つ身として、農業実習生と農家の懸け橋になれるようなアプローチも考えていきたい」と意気込んでいる。 ★海外協力隊 国際協力機構(JICA)のボランティア事業として、開発途上国からの要請に基づき技術や知識、経験を生かして派遣先の国でさまざまな支援活動をする。新型コロナウイルス感染予防のため、3~4月にかけて全ての隊員が国内に引き揚げた。JICA筑波によると、引き揚げ隊員は全国で約1800人。その後の任期切れなどもあり、8月上旬時点で約900人が待機状態にある。

茨城新聞社

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